![夏を乗り切る季節の味 旬のおいしいを切って混ぜるだけ 暑さと夏冷えに負けないカラダへ](img/img-content-main.png)
年々暑さを増す日本の夏。じっとしていても疲れてしまうようなこの季節は、食べるものには気を付けたいものです。しかし、ついつい冷たい飲料を取り過ぎたり、簡単な食事で済ませてしまったりで、栄養バランスの偏りや、カラダが冷えてしまう実感を持つ人は少なくないかもしれません。
カラダは日々、口にする食べものによってつくられるもの。旬のものは、食材の栄養価が高く、その季節にカラダが必要とする成分が含まれているといわれます。また、食事がおいしいと、自然に顔もほころんで、心も穏やかになるものです。
今回は暑い夏を乗り切り笑顔があふれる料理を、栄養士でもあるフードスタイリストの藤司那菜さんがご提案します。旬の味から涼味のテクニックまで、組み合わせて栄養分もなるべく逃さない、手軽につくれるレシピもご紹介します。楽しくつくって、元気な夏を過ごしませんか。
![藤司那菜](img/img-content-person.png)
藤司 那菜(とうじ なな)
フードスタイリスト、フードアナリスト。東京家政大学家政学部栄養学科卒業。栄養士免許、フードアナリスト取得。フードスタイリストとしての活動の傍ら、2021年春には東京 江戸川橋でお弁当屋「温度°(オンド)」をオープン。地域の人に栄養バランスが取れた食事を提供している。
![夏野菜とゆでタコのサラダ](img/img-content-img1.png)
写真は、藤司さんの「夏野菜とゆでタコのサラダ」
やっと、海外旅行にも行けるようになり、旅の醍醐味でもある現地の料理を堪能したり、食に興味がある人なら市場に足を延ばしたり、そこでしか手に入らない調味料や調理器具を探して歩いてみたりと、食を楽しむ方がたくさんいらっしゃると思います。
私は、昨年トルコに行って、中東の食に触れてきました。1日の気温差が大きい砂漠のあるモロッコや気候の変化が激しい熱帯地域の東南アジアなどは、スパイスやハーブを多めに使っているイメージがありましたが、トルコは日本と同じように四季があって、味付けはスパイシー過ぎず、マイルドで食べやすい料理が多かったです。その中でも、滞在中に何度も口にしたのが、「ゆでタコのサラダ」でした。その味が忘れられなくて、食べた時の味を思い出しながら旬の食材をアレンジしたのが「夏野菜とゆでタコのサラダ」。
タコの旬は6月から7月。日本の習わしで、ちょうど田植えが終わるころを半夏生といいますが、関西地方では、タコの足の吸盤のように根を張って稲穂が立派に実るよう豊作を祈り、半夏生にタコを食べる風習があります。タコは高たんぱくでミネラルが豊富。疲労回復の効果が期待できます。風味と味付けに蜂蜜とパセリを入れました。蜂蜜も、疲労回復やミネラルを補ってくれます。パセリはタコと合わせて食べると、冷えの予防に良いとされています。湿度が高くなり、暑さと冷房で体調が崩れやすいこの時期、旬のタコのサラダをぜひ味わってみてください。
![万能ヨーグルトソース](img/img-content-img2.png)
写真は、藤司さんの「万能ヨーグルトソース」
古くから食べられていたヨーグルトをトルコの人たちはそのまま食べるだけでなく、ソースや調味料としても幅広く料理に取り入れており、とてもたくさん摂取していることに感心しました。ヨーグルトは、腸の健康に良い影響を与える食べものです。冷たい飲みものや食べものばかりでは、冷えてトラブルを引き起こしやすくなりますので、腸内環境は整えたいものです。
そこで、暑い夏に火を使わず、混ぜるだけで簡単につくれる「万能ヨーグルトソース」をご紹介します。ヨーグルトはそのまま調理しても問題ありませんが、もっとおいしくするポイントはヨーグルトの水切りです。それによってコクが増し、より濃厚なヨーグルトソースができあがります。ヨーグルトの水切りは、ザルの上にキッチンペーパーを敷き、その上にヨーグルトをのせるだけです。水切りの時間が長いほど水分が抜け、クリームのような口当たりになり、チーズのような濃厚さが増していきます。
そして、私の夏バテ防止の秘策は、おろしにんにくを加えること。にんにくに含まれるアリシンが、腸を活発にし、疲労回復や食欲増進に働くといわれています。名前のごとく万能ソースなので、サラダに合わせたり、肉や魚にかけるソースにしたりとさまざまな用途に使えます。私は、色合いがきれいに仕上がるにんじんのサラダにドレッシングとして合わせたり、濃厚なのでミートソースの上に生クリームの感覚でトッピングしたりしています。
日本の猛暑に活躍するのは、疲労回復に役立つ調味料として知られている、お酢ですよね。世の中にはたくさんの種類のお酢がありますが、どの料理にはどんなお酢を使うのがベストなのか迷うことがある方も多いのではないかと思います。火を通さず、さっとあえる酢の物やさっぱりとした料理の時は、リンゴ酢や米酢、白ワインビネガーなど透き通った色味のものを使用します。煮込みや酢豚など火を通す料理で爽やかな深みを加えたい場合には、バルサミコ酢や黒酢など色味がしっかりとしたものを選ぶことをおすすめします。
![イタリアンパセリやスペアミント、ディル](img/img-content-img3.png)
写真の「イタリアンパセリやスペアミント、ディル」は、サラダに混ぜるとすっきり
私は、“コレだけ”というか、食材そのままのものはほとんど食べず、何かとあえたり、組み合わせたりすることでよりおいしいものになると考えながらつくります。
夏の暑さに負けないために、うなぎを食べる土用の丑の日には、うなぎの蒲焼きをそのまま食べるより、塩もみしたきゅうりと酢であえた「うざく」をつくります。また、「イタリアンパセリやスペアミント、ディル」などは、特に夏はサラダに混ぜるとスッキリするおいしい食材です。使いきれずに余ってしまった時は、もったいない精神で、水の中に入れてハーブ水にして飲んだり、刻んで塩をまぶしてオイルに漬けて保存したりします。それを肉や魚料理の調味料として使ったり、冷やしたお豆腐にかける薬味としても重宝します。
今回ご紹介したものは、切って混ぜるだけや、ただ混ぜるだけでおいしいものが完成します。いろいろなものと混ぜることで、味が決まり、深みが出ますのでぜひお試しを。