西武 そごう

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パリ在住のフードジャーナリスト
伊藤文さんのコラム
ラグジュアリーな
パリのフード事情

Ritz Paris
リッツ・パリで過ごす、
ラグジュアリーな美食のひととき

2024年6月28日(金)

パリの中心地1区にあるヴァンドーム広場の壮麗さにはいつも目を奪われます。南に伸びるカスティリオーネ通りの突き当たりにはチュイルリー公園があり、北側にはラ・ぺ通りが伸びていて、オペラ広場に当たります。
中央にはナポレオン1世がアウステルリッツ戦勝を記念したブロンズの記念柱が聳え、上にはカエサル皇帝像が掲げられており、広場は圧倒されるような雰囲気と言っていいでしょう。カルティエやヴァン・クリーフ&アーペル、ブシュロンなど、時計や宝石のラグジュアリーブランドが広場に立ち並んでいますが、広場の西側を支配するのが、世界的にその名を知られる高級ホテル「リッツ・パリ」なのです。

ホテルは4年にわたる工事を2016年に終えて、リニューアルオープンしましたが、以来、常に魅力的なマイナーチェンジや新しいオファーの提案も行っていて、話題が絶えません。ホテル王と呼ばれるセザール・リッツとフランス料理の基盤を確固たるものにしたオーギュスト・エスコフィエがタグを組んでパリに1898年にオープンしたこのホテルの威光を、あちこちに感じる素晴らしい空間だということは、エントランスから足を踏み入れた途端にわかります。エントランスから真っ直ぐに伸びる回廊の左側には庭を包括したブラッスリー「レストラン・エスパドン」、右側には、午後のアフタヌーンティー、また夕方からのシャンパーニュを楽しめる「サロン・プルースト」があります。

リニューアル・オープンの前からリッツ・パリの威信を支えてきた立役者の一人がシェフ・パティシエのフランソワ・ペレ氏。高級ホテルのシェフ・パティシエを歴任してきたというキャリアの持ち主で、その感性はこの場所で昇華されています。そんな彼のパティスリーを、アフタヌーンティータイムにラグジュアリーな空間の中で楽しめるのが「サロン・プルースト」です。「サロン・プルースト」の名は、かの有名な作家プルーストがホテルの常連でもあったことから。名著「失われた時を求めて」では、マドレーヌを紅茶に浸した時の香りの記憶が描かれており、あまりにも有名ですが、そのストーリーからマドレーヌはペレ氏のエンブレム的なパティスリーとなっています。

焼き菓子のマドレーヌだけでなく、マドレーヌの形で焼いたブリオッシュ生地で作る「ババ」は、「サロン・プルースト」での看板娘です。コーヒーか紅茶、あるいはカカオ豆のシロップのいずれかを、お好みでマドレーヌの形をした生地に浸してもらい、たっぷりとしたバニラ風味クリームを載せていただきます。そのほか、レモンタルト、チョコレートタルト、マーブルケーキ、フランボワーズコンポートのタルトレット、フラン、タルトタタンなど。いずれもクラシックパティスリーですが、現代に昇華させた軽やかで繊細な味わい。目にも美しく、十二分に楽しめるセットは、ホットドリンクのほかシャンパーニュなどもついて95ユーロです。ちなみにリッツ・パリの西側に面する裏通りのカンボン通りには独立した店舗「ル・コントワール」もあり、テイクアウトも可能です。こちらの店舗では、季節のガトーなど、よりコンテンポラリーなクリエーションに出会えるでしょう。

また昨年からのビッグ・ニュースは、2021年からクローズドだったメインダイニング「エスパドン」がホテル内の場所も変えて再開したことでした。そしてシェフに就任したのは女性シェフのウジェニー・ベジア氏です。アフリカで産まれ、スペインの血も混じるべジア氏。大学では文学専攻だったと言いますが、料理の道を選んでから、必ずガストロノミー界の第一人者の一人になると心に決めていたそうです。南仏コート・ダジュールのヴェイルヌーヴ・ルーベにある「ラ・フリビュスト」のシェフに就任して1つ星を獲得したことが、彼女の名声を密かに知らしめることになりました。なんとヴェイルヌーヴ・ルーベは、エスコフィエの生誕地でもありますから、不思議な縁で「リッツ・パリ」に導かれたとも言えるでしょう。

アフリカの時の味わいの思い出や、南仏の香りを閉じ込めた料理のクリエーションは、「女性ならではの、繊細さと優しさが宿っています」とは、フランスで唯一ミシュラン・ガイドの3つ星を女性シェフとして獲得しているアンヌ=ソフィ・ピック氏も絶賛しています。スペシャリテの一つはアフリカの郷土料理である鶏肉の煮込み料理「ヤサ」から着想を得たもの。オレンジやレモン、コンバワなどの柑橘を効かせたバターを詰め、丸々焼き上げた雌鶏に、粘土で覆って焼き上げた玉ねぎのコンフィを添えています。またオマールの料理では、アフリカのビサップというハイビスカスティの味わいをアイディアに、心地よいハイビスカス風味の酸味をオマールに添えるソースに閉じ込めています。

ちなみに野菜や果物は「リッツ・パリ」が所有するヴェルサイユの庭園から、ハーブはホテルの屋上にあるハーブ園からと、バリのガストロノミーらしいこだわりも魅力。今年の3月発表の仏版ミシュラン・ガイドでは1つ星を早々獲得して、これからの活躍が楽しみです。
また、カンボン通りから入ったところにある「リッツ・バー」、ホテル滞在者ではなくとも利用が可能の「スパ」など、フランスならではのラグジュアリーを体験できるのは、高級ホテルが自信を持って用意するサービスだと思います。

Photos/Vincent Leroux, Bernhard Winkelmann, Joann Pai, Emanuela Cino, Alterego, Studio PAM

フードジャーナリスト 伊藤 文Aya Ito

1998年より、在仏食ジャーナリスト・アナリストとして活動。
数々のメディアでの取材・執筆、食関係の本の出版、翻訳の経験、また食分野で活躍する様々なタレント(経営者、シェフ、生産者など)との深い交流を生かし、食を通して日仏をつなぐDOMAを創立(在仏)。
2017年には、パリ12区バスティーユ界隈にショールーム・アトリエ・物販店「atelier DOMA」をオープンする。
和庖丁の販売、メンテナンス、研ぎ教室を中心に、日本の食文化やものづくりの精神を伝える事業も展開する。

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