パリ在住のフードジャーナリスト
伊藤文さんのコラム
ラグジュアリーな
パリのフード事情
創業100年を迎えた
ホテル『サン・レジス』が提案する、
モダンなティータイム
2024年2月8日(木)
パリの目抜き通り、シャンゼリゼ大通りの裏通りに佇む、由緒あるホテル『サン・レジス』。昨年創業100年を迎えて、今までにない食体験を楽しめるティータイムを提案することに。シェフ・パティシエとして白羽の矢がたったのは、ジェシカ・プレアルパトさん。2019年には「世界のベストレストラン50」が選ぶ「ベストパティシエアワード」も受賞した精鋭です。「パティスリーを料理する」と言ってはばからない、今までにはないスイーツの世界を表現します。
もともとは名レストラン『トゥール・ダルジャン』のオーナーが創業者でした。1950年代には、やはりホテル『ジョルジュ・サンク』も所有していたそのオーナーが、『ジョルジュ・サンク』を売却するのに当たって、家具の一部を『サン・レジス』に移しました。『サン・レジス』が、ディオールのブティックからもほど近い場所にあることもあり、あっという間に感度の高いパリジャン、パリジェンヌが集う場所になったという華やかな歴史があります。1984年に今のオーナーであるレバノン出身のエリ・ジョルジュ氏が所有者となり、多くのパラスホテルを手がける内装デザイナー、ピエール・イヴ・ロション氏がリニューアルを監修。ナポレオン様式やルイ16世様式の家具やオブジェを現代風に引き立てる、洗練されたスペースに変身させました。
そしてエリ・ジョルジュ氏の2人の娘がオーナーとなった『サン・レジス』に、創業100年を迎えて、ティータイムを充実させることに。パティシエールのジェシカ・プレアルパトさんとの出会いがその夢を実現させることに一役買ったのでした。プレアルパトさんは、アラン・デュカス率いていたパリの3つ星レストラン『アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ』のシェフ・パティシエとしても活躍し、さまざまなアワードを次々に獲得する注目の人物でした。
レストランスペース「レ・コンフィダンス」で水曜日から土曜日まで提供するアフタヌーンティーのコースは3つのサービスで構成されています。はじめのサービスは、ビスケット系の焼き菓子とミニシュークリーム。ジンジャーとシナモン、ナツメグ、丁子がたっぷりと効いたビスケットに、グリルで焼いたゴーフル、古代小麦ホラーサン小麦の粉のサブレに、蜂蜜、チョコレートソース、タジン風に炊いたミックスフルーツが添えられます。2回目のサービスでは、セロリのシャーベットにレモンのコンフィ、エストラゴンのペストーが添えられて、まるで料理の口直しのよう。それに柿と金柑のタルトを合わせていただきます。プレアルパトさんが働いていた『アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ』での信条は「ナチュラリテ」といって、自然の中に生きる素材の味わいをそのままに生かすということだったのですが、そうしたエスプリをこの場所でも引き継いでいました。
3回目のサービスはチョコレートのデザートで終わります。ブルターニュの農家の生乳で作った自然の味わいそのもののクリームを、ニコラ・ベルジェさんというカカオの焙煎士が作るサオトメ産のチョコレートを使用した、苦味と酸味のバランスが素晴らしいガトー・オ・ショコラとの相性は抜群。ちなみに、このティータイムのために特別にブレンドしたルイボスティーをベースにしたハーブティーの味わいも秀逸です。ペリエ・ジュエのシャンパーニュを合わせたコースもオススメしています。
Photos/©Pepa Sion, RomainRicard, Virginie Garnier, Hotel Saint Régis
フードジャーナリスト 伊藤 文Aya Ito
1998年より、在仏食ジャーナリスト・アナリストとして活動。
数々のメディアでの取材・執筆、食関係の本の出版、翻訳の経験、また食分野で活躍する様々なタレント(経営者、シェフ、生産者など)との深い交流を生かし、食を通して日仏をつなぐDOMAを創立(在仏)。
2017年には、パリ12区バスティーユ界隈にショールーム・アトリエ・物販店「atelier DOMA」をオープンする。
和庖丁の販売、メンテナンス、研ぎ教室を中心に、日本の食文化やものづくりの精神を伝える事業も展開する。