JADE GENIN／ジャド・ジュナン
のラグジュアリーなビーガンチョコレート

2024年1月10日(水)

パリのオペラ通りに2022年にオープンしたショコラトリー「ジャド・ジュナン」。パリのチョコレートに詳しい人であればピンと来るかもしれませんが、ショコラティエでありコンフィズリー(砂糖菓子)の美味しさでも有名な、ジャック・ジュナンの娘です。日本でもバレンタインデーのイベントでも大人気。私自身も、チョコレートだけでなく、彼の作るヌガーやパート・ド・フリュイ(フルーツゼリー)のファンです。娘のジャドのことは、ここ数年、父ジャックのクリエーションを手伝っていたので注目していました。特に、復活祭の時にお目見えする、ペインティングを施した卵型のチョコレート。色彩豊かでダイナミック。それを彼女が手がけていたのです。その後ジャドは独立し、自身のショコラトリーをオープン。その話題はパリで持ちきりになったのです。

ブティックは白を基調にした明るい店内で、オーガニックなゴールドの調度を配しています。宝石を展示するようにチョコレートを並べたケースがとても印象的。メインのケースには、色とりどりのボンボンショコラがずらりと並べられていますが、その形がピラミッド型。筆で塗りつけた色彩も美しく、今までに見たことのなかったチョコレートの世界が広がっていることを感じます。

ジャドは1992年生まれです。はじめは弁護士の道を選んだと言いますが、父が作るチョコレートの世界に惹かれて、手伝うように。2019年には父の店「ジャック・ジュナン」のシェフ・ショコラティエにも就任して、父親の繊細な味わいを表現していました。弁護士からショコラティエとは、大きな人生の転機だったのでは、と彼女に問うと、「弁護士の知識を得ることで経営者としての力もついた。着地点としては当然でした」と答えます。自身1人で会社を創業して、チョコレートを創作しながら、経営する力は見事しか言いようがありません。

ところでジャドが自身のショコラトリーをオープンしたいと思ったのは、よりピュアな味わいのチョコレートを追求してみたいと思ったからだそう。素材そのものの味わいをチョコレートに閉じ込めること。そのため牛乳やバターといった乳製品や動物性由来の素材はもちろん、植物性の代替素材も一切使わないそう。白砂糖や添加物も加えていません。使うのは自然の素材だけ。スパイスやハーブは水やオイルなどで香りを抽出してからチョコレートに加えているといいます。レモンとライムの果汁をふんだんに加えたガナッシュや、コリアンダーとタイのバジリコ風味のガナッシュ。タヒチ産のバニラ風味、栗の蜂蜜入り。さらに、ジャスミンティ風味のアーモンドのプラリネや、カモミール風味のヘーゼルナッツのプラリネなど。今までに体験したことのなかったような、素材の香りが弾けるような鮮烈さを楽しめます。また、大きさも1粒5gと、半分くらいの大きさと、ぐっと小さいサイズ。

形をピラミッドの形にしたのは、「ルーブル美術館の広場にあるガラスとメタルでできたピラミッドの形の入り口と、コンコルド広場にあるオベリスクのてっぺんにある帽子の形からインスピレーションを得た」といって、パリらしさと個性を表現するためだったそう。もちろん彩色に使った着色も、天然顔料のもの。小さなオブジェのようなチョコレートが入った「ジャド・ジュナン」と型押しされたオリジナルのゴールドのボックスは、素敵なプレゼントになりそうです。

また、岩のような形に仕立てたプラリネチョコレート「ロシェ」も、口当たりも楽しく癖になる味わい。ポップライス入りモルトのプラリネやポップライス入りヘーゼルナッツのプラリネ、ピスタチオとオートミールのプラリネなどと、こちらも個性揃いで人気のチョコレートです。

Photos/Thomas Duval, Stéphane Grangier, Malthusian Belt