西武 そごう

meet LUXURY

meet LUXURYは西武・そごうが厳選する
ラグジュアリーな商品やイベントをご紹介する
情報サイトです

パリ在住のフードジャーナリスト
伊藤文さんのコラム
ラグジュアリーな
パリのフード事情

はじめまして。
パリ在住フード関係のジャーナリスト、翻訳家、あるいは起業家として活動している伊藤文と申します。フランスと日本を行き来し始めてもう30年近く。途方もない年月を2つの国を見て生活をしてきて、いまだ、フランスにも母国にも驚きのある発見に出会えるという、そんな毎日に感謝しています。
長年活動してきたので、小さな起業から始めた友人たちが、やっと成功してビッグになる、あるいは180度転換して新しい挑戦に挑むなど、紆余曲折を経た経過にも寄り添って、共にしてきたという事例もたくさんあって、振り返ると感慨深く感じます。

2011年の東日本大震災のときにもパリにいました。その時は私にとっての大きな転換点となったのを感じています。私のパリの家族とでもいっていい、パリ11区にあるビストロ「ポール・ベール」のオーナー、ベルトラン・オーボワノさんの言葉もあって、「ポール・ベール」を舞台に、日仏の仲間たちと一緒に、被災者のためのチャリティディナーを開催しました。オーボワノさんの息子さんの一人が日本人女性と結婚。2人は日本に住んでおり、お孫さんがいらっしゃるという境遇もこのディナーにつながりました。

チャリティーには総勢150人が集結。その時に手伝ってくださった仲間には、辛口美食批評家のフランソワ・シモンさんもいらっしゃいましたし、仏版ミシュラン・ガイドの2つ星の評価を日本人として初めて獲得した佐藤伸一さんもいました(この秋、パリ16区に隈研吾さんの内装で「Blanc/ブラン(白)」というレストランをオープンします)。佐藤さんは「ポール・ベール」のシェフ、ティエリー・ローランさんと一緒に、料理を作ってくださった。お客様には、パティシエのピエール・エルメさん、3つ星料理人のアラン・パッサールさん、建築家のジャン・ミッシェル・ヴィルモットさんなどの方々もお忙しい中、足を運んでくださいました。

日仏の仲間たちが過ごした一夜でしたが、その温かな交流は忘れられず、食を通した日仏の架け橋が求められている、それをしたいと誓うことになったひと時でもありました。
今は、パリ12区に日仏ハーフのマリナ・メニニ、会計のエキスパートで「資生堂」さんや「とらや」さんなど、日本の企業のパリ立ち上げなどにも関わったフィリップ・リシューとともに、日本の包丁研ぎの教育や販売を中心として日本の食文化を伝える「DOMA」も運営しています。

ところで、「ポール・ベール」はポール・ベール通り18番地にあり、「DOMA」から歩いて15分のご近所にあります。左隣には魚介専門のレストラン、右隣にはワインバー。そして6番地にはモダンなビストロ「Le 6/ル・シス」を構え、4軒を切り盛りしています。「Le 6/ル・シス」では、いままでも気鋭の若手シェフを受け入れて、さまざまな試みをしてきましたが、この秋からはまた新しいチームで再出発!

日本の番組「料理の鉄人」に似た、フランスで話題の料理番組「トップ・シェフ」にも2021年に出演して人気を博した女性シェフポーリーヌ・セネがシェフに就任。その初日のディナーに、友人枠で招待されました。パリの栄華を極める、コスト兄弟がプロデュースする「ホテル・コスト」をはじめ、グループのすべてのホテル・レストランのメニューを監修する料理長のディディエ・コリーさん。スタルクがインテリアを手がける「カフェ・ステルヌ」など、質実剛健なレストランやホテルを手がけるダヴィッド・ラネールさん。日本でも鮮烈なクリエーションで有名なショコラティエのジャック・ジュナンさんなど、パリのフードシーンを支える錚々たる重鎮たちと食卓を共にするひととき。皆さん、いま手掛けていることや、その情熱を、美味しい料理やワインに舌鼓を打ちながら、熱く語り合う。パリの骨のあるラグジュアリーは、こうした食卓から生まれていくと実感します。

私はここ10年ほど、パリ7区、エッフェル塔の東麓あたりに住んでおり、最近はミニバイクの自転車を足にして、あちこちへと出かけます。こうしたパリ、フランスならではの、レアでラグジュアリーなシーンを綴ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

Cravan/クラヴァン

サンジェルマン・デプレの歴史的な文学地区の中心部、17世紀に遡る建物内に
おしゃれなカクテルバーが誕生しました。その名は「CRAVAN(クラヴァン)」。
プロジェクトは、LVMHグループの「モエ・ヘネシー」によるもので、
CRAVANのミクソロジーのノウハウとアール ド ヴィーヴルを紹介する
3つのカクテル バーと、リッツォーリ NYと提携したライブラリーを備えています。
最上階には、屋上のミニキオスクにアクセスできるワークショップがあり、招待制でアクセスできます。

2023年10月18日(水)

バカンス前の7月、パリ中心地サンジェルマン・デプレ界隈に、世界中のカクテルファンのメッカとなるようなビッグスペースがオープンしました。
「カフェ・フロール」や「カフェ・ドゥマゴ」をはす向かいに見る、サンジェルマン・デプレ大通りの165番地。建物まるごとが、ラグジュアリーなカクテルバー「クラヴァン」となったのです。LVMHのモエ・ヘネシー社が初めて手がけるカクテルバーとしての触れ込みもあって、何かとイベントの多いこの9月、ファッションウィークやらラグビーのワールドカップやらで、ファッションピープルがこぞって訪れ、界隈は沸き立っています。

もともと「クラヴァン」は、2018年にパリ16区にオープンしたカクテル・カフェ。知る人ぞ知る、隠れ家的な店として愛されてきました。オーナーはフランク・オドゥさん 。ギャラリストでしたが、後々「世界のベストレストラン50」の上位にもつけることになる「シャトーブリアン」のシェフ、イナキ・エズピタルトさんの出会いから、アートと料理の共通点を見出すことに。もう一人の友人と共に、「シャトーブリアン」をパリ11区に立ち上げることになったのです。そして世界的な有名店へと導いていきました。
時を経て、そのオドゥさんは、今の時代にふさわしいカクテルをサービスするカフェを作りたいという思いに駆られることに。そしてオープンしたのが「クラヴァン」でした。

16区の「クラヴァン」は、アール・ヌーボーの曲線美のある壁が印象的な1911年建造の建物。1階にあるカフェの内装は歴史的建造物にも認定されています。オドゥさんが古物商で集めたバカラなどのグラスでサービスする洗練されたカクテルと、小皿で出す軽食のペアリングが秀逸です。

オドゥさんは、2019年には、ニューヨークの出版社「リッゾーリ」で、著作「フレンチ・モダン・カクテル」を出版しています。21世紀初頭のカクテルの歴史をレシピ通り混ぜた洒落た本です。また新型コロナウィルスのパンデミックでは、オリジナルのカクテルをボトル入りするなどの挑戦にも挑んでおり、サンジェルマン・デプレにある2軒目の「クラヴァン」への軌跡となりました。この「クラヴァン」のコンセプトをモエ・ヘネシー社が気に入り、オーナーに。オドゥさんは、「クラヴァン」のクリエーターとして、カクテルと料理のレシピはもちろん、インテリア、スタッフウェアのデザインなど、すべてをとりしきっています。

1階は16区のお店を見立てた内装のカフェ・バーに。2階はギャラクシーモダンなバー。3階は、海外初進出の「リッゾーリ」のライブラリー、4階は「クラヴァン」のオリジナルボトルを味わえるスペシャルスペース。5階はイベント用のフリースペースとなっています。

モエ・ヘネシー社ならではのドリンクをふんだんに使用した贅沢なレシピが、この店のアドバンテージ。例えば、ドンペリニョン2013年をベースにした「ロワイヤル・ロワイヤル」や、リュイナール・ブリュットをベースにバジリコの花を香りづけした「ロワイヤル・バジリック」など。

カラスミを乗せたフォッカチャ。オニオンと発酵さくらんぼを乗せたパイ。ズッキーニの花のフライにマルジョレーヌ風味のリコッタ。紫蘇風味の蕎麦。温泉卵。一捻りきいた小皿料理も小気味よく、カクテルが進んでしまいます。

ところで「クラヴァン」の名前は20世紀初頭を生きたアルチュール・クラヴァンから。オスカー・ワイルドの妻コンスタンスの甥で、ボクサーであり編集者、そして規格外の詩人だったという伝説が残る人物。クラヴァンのように繊細でありクリエイティブで、冒険的でありたいと願うオドゥ。文化の香るサンジェルマン・デプレという、「クラヴァン」にふさわしい界隈で、どんな歴史を紡いでいくのかが楽しみです。

Photos/Vincent Leroux, Elie Obeid, Alice Fenwick, ©Cravan

フードジャーナリスト 伊藤 文Aya Ito

1998年より、在仏食ジャーナリスト・アナリストとして活動。
数々のメディアでの取材・執筆、食関係の本の出版、翻訳の経験、また食分野で活躍する様々なタレント(経営者、シェフ、生産者など)との深い交流を生かし、食を通して日仏をつなぐDOMAを創立(在仏)。
2017年には、パリ12区バスティーユ界隈にショールーム・アトリエ・物販店「atelier DOMA」をオープンする。
和庖丁の販売、メンテナンス、研ぎ教室を中心に、日本の食文化やものづくりの精神を伝える事業も展開する。

アーカイブはこちら

BACK TO TOP

店舗のご案内STORE INFORMATION

SHARE

※インターネットエクスプローラー(Internet Explorer)では
ご利用いただけません。