幽霊と妖怪は、古くから物語や絵巻物に描かれ、江戸時代には挿絵入りの小説、歌舞伎の隆盛と相俟って様々な作品に登場し、大流行しました。恐怖心をあおるばかりではなく、時に美しく時に愛らしい幽霊・妖怪画は日本独自のジャンルであり、現代の漫画やアニメ、映画に大きな影響を与えたといえるでしょう。
京都出身の日本画家で、風俗研究家でもあった吉川観方(1894-1979)は、絵画、染織、工芸など約12000点にのぼる風俗関係資料を生涯にわたり収集しました。観方は、日本の風俗史を研究するなかで幽霊や妖怪に強く惹かれ、その収集資料には江戸中期から昭和期までの様々な幽霊・妖怪画が含まれています。
本展覧会では、福岡市博物館に所蔵される吉川観方のコレクションを中心に、肉筆画や浮世絵版画の幽霊・妖怪画約160点を一堂に展覧いたします。幽霊画を得意とした円山応挙筆と伝える作品をはじめ、伊藤若冲、歌川国芳、月岡芳年、河鍋暁斎など、各時代に活躍をした絵師たちが描いた恐ろしくも美しい世界をぜひお楽しみください。