こんな文からはじまる、絵本『いのくまさん』。詩人の谷川俊太郎による言葉で、「いのくまさん」こと画家・猪熊弦一郎(1902-1993)の作品を紹介する一冊です。本展はこの絵本から生まれました。
猪熊は90歳で没するまで、「勇気」をもって、常に未知なる自分の世界を切り拓いてきました。東京美術学校在学中の写実的な自画像、念願の渡仏を果たしマティスに多くを学んだ人物画、一時は10匹以上も飼っていた猫たちをユーモラスに描いた作品、52歳にして移り住んだニューヨークで都市をテーマに挑んだ抽象画、ついには地球を飛び出して宇宙をモティーフに繰り広げた様々な色と形。絵本『いのくまさん』では、多彩かつ長きにわたる猪熊の仕事が、わずか250字あまりの平仮名で的確に表現され、ページをめくるたびに創意と制作の喜びにあふれる猪熊作品が目に飛び込んできます。
本展は絵本『いのくまさん』を元に構成されたもので、「じぶんのかお」「ほかのひとのかお」「とり」「ねこ」「かたち」「いろ」などのテーマに分け、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館所蔵作品から約120点を展覧。谷川の簡潔で美しい文章を案内として、具象も抽象も超えて無限に広がっていく猪熊ワールドの魅力を辿っていきます。