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美を愛し、食を愛した昭和の巨人、北大路魯山人(きたおおじ・ろさんじん 1883-1959)。没後半世紀近く経つ今もなお、その作品は多くの人々を魅了してやみません。京都に生まれた魯山人はまず書家を志し、石などに字を刻み印章を作る篆刻(てんこく)家としてその経歴を始めました。パトロンともなった風流人たちとの出会いから美食に目覚め、会員制の料亭を経営し、料理を彩る陶磁器への関心を育みます。陶芸を始めたのは40代という遅いスタートでありながら、魯山人はもちまえの美意識により、独自の器を誕生させたのです。織部、志野、瀬戸、備前など、特定の窯や様式にとらわれることなく、その手によって生み出された多種多様な作品は、ひとつの宇宙にも例えられましょう。そして日本国内だけでなく海外でも高い評価を受け、ピカソやシャガール、イサム・ノグチなど、外国の芸術家とも親交を結びました。
本展覧会でご紹介するカワシマ・コレクションはアメリカから里帰りしたもので、アメリカで魯山人が評価されるきっかけをもたらしたシドニー・カドーゾ氏の収集品が中心となり、ほとんど使用されることのなかった秘蔵の名品です。また作家ゆかりの料亭である紀尾井町・福田家、銀座・久兵衛で今日にいたるまで愛用され続けている食器などもあわせて展示し、約110点の陶磁器、漆芸、絵画などによって魯山人の作品世界を展覧いたします。 |